5月4日 快晴
5:00 - 早月小屋 7:30 - 烏帽子岩 9:30 - 獅子頭手前(2830m) 11:30
朝3時におきて、美味しい~(YO)マルタイを食べてから登り開始。1900m
を越えたら本峰、小窓の王が視野に広がった。これは早月尾根の素晴らしいところ
である。樹林帯があっても、尾根が急なおかげか、好天なら本峰が常に見える。
さて、早月小屋で休憩をした。計画はもう、熊の岩までとしていた。何となく、
アイゼンでの差稜線は著者を含めてこのメンバーで、まだ早いかと思って、
その代わりに6峰のAフェース、雪の状況がよければCかDフェースも登ろう
と考えていた。
烏帽子岩を登るとき、上から懸垂待ちの人が8人もいた。「ロープだそうか」
と他のメンバーに聞いたら、前に上った人もロープ無しで登ったからか
「いいんじゃない」との答え。だがロープを出さなかったのは、間違いだった。
先行パーティーは左の急な雪壁を登ったが、懸垂してくる人と同時に登ろうとしてもしょうがない
から、右側の岩場を先に登った。
確かに下から見たところも、ちょっと脆くは見えたが、
実際に行ったら、烏帽子岩の上部はザックの底に一週間潰されていた動物ビスケットだった。真先と朝日に
来るなと叫んだが、もう登り始めており、真先がクライムダウンに高すぎる位置にいた
せいか、同じルートを登ってきた。朝日が左側の雪壁にトラバースした。
自分で脆い岩を上まで登って、みんなどこにいるだろうとかなり心配していた。これは
他のメンバーはハング下にいたからである。
20分くらい経てば、真先がハングの右から顔を出し、脆さでいうとルートの核心部についた
ことが分かった。そして朝日が
雪壁ルートの傾斜80度の上部の手前についていて、クリップしていた。3人パーティーで
ロープは2本持っていたが、1本は真先が持っていて、1本は朝日が持っていた。「誰か
一人こっちへ登って、他の一人を助けるから」と言ってみたが、どちらも動かない。仕方なく、
朝日のところへロープを取りにクライムダウンするしかない。しかしその時、
上から別パーティー二人が降りて来て、どうせ懸垂するつもりだったのでロープを貸してくれた。
恩糸を使って、朝日と真先を助け出すことができた。
では、烏帽子岩を越えたことろ。先頭に出していた朝日が、疲れたという。少し進んだら
スピードが半端なく落ちる。一歩一歩苦労しているらしい。聞いたら風邪を引いた
かもと。休憩して、熊の岩までいけるかと尋くと、何とかなるだろうという感じ。
その時居た場所は、早月尾根の上部で狭くてやせており、悪天、風がぶち当たるところだから、
もし病気になって、何日かの停滞になるかも知れないから、とにかくまずい。つまり
選択肢には、熊の岩まで行くか、早月小屋に戻るかとがあったが、戻るのに急な雪壁を
下降しなければならず、スリップしたら終わりだ。
しかし、1時間もかけて標高差50mくらい進んだら、目の前の本峰まであとわずか170m
登りのところ、動けなくなった。時間はまだ、昼さえすぎていないから、とりあえず
少し休んでもらって、近くに幕営できる場所ないかと探しに言った。獅子頭を越え、
本峰に登ったが、熊の岩までの距離を見たら、普段なら一時間もかからないだろうに
今の状況ではとても無理だと分かった。しかし頂上付近の雪を削れば、風に強い
よいテンバができるし、雪洞さえ作れる。
そこでみんなが待っていたところに戻り、調子を聞いたら山頂まででも無理だと分かった。
下降も同じく。空身にしても。調子から診断したところ、致命的高山病にはまだ早い
(入山してから2日目)から、もとに風邪があって、それに空気の薄さ、過労、
日焼けが加えたコンビネーションだろうと考えた。無理にちょっと危険なところを下降しなくて、
休めば何とかなるだろう。
そこで休んでいた狭くて風当たりが悪そうなところの雪を掘って、見た目上いい幕営地が
できてテントを張った。
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