山行報告:春合宿2007 荒天の槍ヶ岳中房温泉・燕岳・東鎌尾根・槍ヶ岳・新穂高温泉
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最初天気に恵まれて、素早く進んで、快適だなと思いきや、日本海に猛烈な低気圧が来て、 山行が暴風・風雪の中のサバイバルに一転した。そこで何とかやり抜けて、槍に登って、 生きて帰れたことに達成感があった。 text:平気 photos:平気、青木(ムネ) | ||
3月1日 快晴 浜松/静岡=穂高=宮城ゲート 14:00 − 中房温泉 18:30
難なく宮城ゲートから中房温泉まで歩いた。と言いたいところだが、
真先もムネも靴擦れになった。靴擦れが第一の敵だと注意したのに〜 | ||
3月2日 快晴 中房温泉 X.XX - 燕山荘 13.XX - 燕岳 XX.XX - 稜線 12.00 | ||
合戦尾根は雪がついていたが、わかんがいらなかった。まったくラッセルなし で稜線まで抜けた。こんなにラッキーなものはないと思いながら、 ちょっと残念な気持ちもあった。沢のヒル・虫と同じように、やっぱり 春合宿はラッセルがないと寂しい。稜線は地肌が出ていた。 | ||
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3月3日 晴れ 燕山荘 X.XX - 大天井岳 XX.XX - 大天井ヒュッテ XX.XX - 2560m 13.XX 槍・穂高のすばらしい展望を眺めながら表銀座を歩いた。大天井岳まで 難所まったくなし。調子がよくて、時間が早かったので、計画の大天荘をやめ、 トラバースルートで大天井ヒュッテに向かった。しかしこれは間違いだったかもしれない。 トラバースルートは以外にと雪の付き方が悪くて、かなり不安定な、ほぼロープを 出してもいいような雪壁の登下降・トラバースが強いられた。稜線沿いに歩いた 方が確実な様だ。 大天井ヒュッテから稜線沿いに牛首山の展望台のピークを登り下りし、次のコルを過ぎたら、 雪壁を掘ればかなりいい幕営地ができるんじゃないかと気付いた。風がだんだん強くなって 来ていたため、稜線上の平らなところがあまりよくないとも思った。過去の記録を見た限り、 赤岩岳の通過に時間がかかるだろうとのこともあって、行程を早く切って、 雪洞を作った。掘るのに3時間程度かかった。スノーソーが大変役に立った。 中は広かったが、30センチ程度雪が足りなかったので、座るスペースは 結局狭かった。今年は雪が少ないがしっかりしている。 | ||
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3月4日 晴れ 雪洞 X.XX - 赤岩岳手前 XX.XX - ヒュッテ西岳 XX.XX 一気に赤岩岳の直前のピークまで登って、本峰直下のトラバースの手前からロープを出した。 槍・穂高の方は曇っていたが、われらのところは日が出ていて風の吹かないところはバーベキューだった。 赤岩岳の雪壁は西日で歩きやすい・滑落しても自然と止まる状態になっていた。 どちらかというと雪崩が心配だった。しかし、雪壁の雪質自体がよく、弱層がなかった のでトラバースにした。2ピッチ進んだら雪崩がだんだん怖くなって、目の前に表面の小雪崩が 実際に起きていた。途中の木の付いたリッジから稜に抜け、本峰を過ぎたすぐのところから 雪・岩のナイフリッジを丁寧に進んだ。登るところは急な斜面があったりしたが運よく 下るところは緩傾斜ばかりだった。逆コースの方が難しいだろう。 ヒュッテ西岳についたらまだ時間的に少し余裕があったが、低気圧が来ていると分かっていて、 東鎌尾根の中途半端なところよりここで泊まった方が快適で安全そうだった。 余り時間を利用し、ヒュッテの屋上の上で寝袋と装備を乾かしたりした。 夜から、天気が荒れた。 | ||
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3月5日 風雪 停滞 夜中から天気が荒れて、風に向かって寝てた著者とムネは頭がテントに押された。 お互いの話声が聞こえないほど風がうるさかった。午後からちょっと弱まったら、 大音量が出る無線機でラジオを聴いたりした。富山県の高速道路でトラックがいっぱい 風で転がっている、富山県・長野県北部は下界でさえ暴風地域に入っているなど、 敗退ができないところに着いていた私たちにとって特に、楽しいニュースばっかりだった。 真先は前日サングラスを使わなかったせいで、雪盲になっていた。目が痛かったのでずっと テントの中でもサングラスをかぶっていた。 | ||
3月6日 晴のち風雪 ヒュッテ西岳 X.XX - 偽水俣乗越 11.30 - ヒュッテ大槍 XX.XX 朝日が出ていて、前日の天気予報でも本日は晴れるとのことがあって、行動することにした。 著者のスパッツは朝、どっか消えてしまった。気付かないうちに風に吹き飛ばされただろう。 西岳からのトラバースは途中からロープを出して行った。アイゼンの歯が著者のより長い 真先とムネの方が余裕そうだった。偽水俣への雪壁は悪そうで不安定そうだったので、 隣の稜を4回の懸垂で降りて、途中から雪壁をクライムダウンした。 偽水俣乗越に着いたら日が隠れた。朝から軽く降っていた雪が合図があったか のようにもっと激しく降り出した。風がだんだん強くなってきた。(本)水俣乗越 に着いたころはもう風雪だった。スパッツなしのラッセルは本当に楽しかったな。 東鎌尾根は雪の付き方がかなり悪く、不安定、ところどころ非常に不安定な雪壁の 登り下りが強いられた。しかも、ビレーできないところがほとんどだった。 風がますます強くなって、暴風となって、耐風姿勢をとりながら、登った。 梯子が殆ど、鎖が全部埋もれていた。 ヒュッテ大槍についたら助かったって気持ちが強かった。しかしここも建物の影とはいえ、 風が非常に強かった。テントを張るのは苦労した。テントの風側がほとんど潰され、 上半身が入らないところになっていたので、ザック、荷物を全部風側に置き、 みんなは頭をドア側にして寝た。(寝ようとした)。ベンティレーションを細引きで結んだなど、穴を全て閉めた のに、どこからか雪が中に入ってきた。 水作りをせずに、あまった水で炊き込みご飯だけ炊いた。まずかった。 この日の行動中、みんなが顔・足・指先に凍傷を食らった。 夜、テントのどこかが少し破れた。 | ||
3月7日 風雪一時雪 ヒュッテ大槍 X.XX - 槍岳山荘 X.X 夜は荒れていた。が、朝9時くらいから風が弱くなった。ここでおきて、 みんなの寝袋の上に雪が1センチくらい積もっていた。入り口のちびっ子穴から 入ってきていたみたい。2日前に乾かした寝袋はみんなびしょびしょになっていた。 風が弱くなったから、現在の幕営地はあまりにもよくないから槍ヶ岳まで進むか、 今の場所を改良するかとなったら、槍山荘が近いから行くかとやる気が出た。 テントを掘り出してホワイトアウトの中、槍に向かった。途中からまた風が吹いてきた。 東鎌尾根上部でも雪の着き方が悪く、今回はいつ崩れるか分からないクラスト状だった。 でも、槍岳山荘に着いたら、冬季小屋を発見し、すごく嬉しかった。 天気が回復するまではもう動かないと決めた。 | ||
3月8日 風雪 停滞 冬季小屋の中の真っ暗で過ごした。山にいる感覚がどんどん薄くなった。 焼肉とメガマックの話で盛り上がった。沢登の話でも花が咲いた。 天気図をとったら、低気圧がようやくどっか行っちゃいそうで、 天気予報では朝は晴れるが、気圧の谷の通過によって昼からまた天気が 荒れるとのことだった。そこで、食料も燃料ももう殆どないこと を考えて、翌日は新穂高温泉へ下山することにした。 | ||
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3月9日 快晴のち曇り 槍岳山荘 X.XX - 槍ヶ岳ピストン X.X - 槍平小屋 X.X - 新穂高温泉 X.X = 高山 朝からうそのように晴れた。久しぶりに写真を撮ったりし、行動準備をした。槍の ピストンは難しいところはなかった − 下降時、上部の雪壁でロープを出した − が、 山頂に立った達成感はすごかった。出発したときに速く終わりそうな山行が、 とてつもないサバイバルになって、それを越えることができたからだった。 山荘から西鎌尾根方面に稜線沿いにどんどん降りた。雪崩状況を見て、 大喰沢の出会い辺りに着くようにに向かって2388m手前から稜を谷底に下りた。沢筋に気を付けながら 谷を歩いた。前の数日間の稜線に比べると夢のような世界だった。晴れてて、 風もなく、大自然の中を歩く。槍平からクロスカウントリースキーのトレースがあった。 チビ谷あたりは大きな雪崩の跡があった。 ヘリが滝谷の方をずっと回っていた、誰かが遭難していたかもしれない。 あんな天気で無理でもない。何もなければよかった。 新穂高温泉からちょうどバスがあって、高山に行った。グリーンホテルの温泉はすばらしい。 温泉の後、近くの飛騨牛食べ放題で食べ過ぎてお腹が痛くなった。 幕営は城公園の隅っこにした。宿坊も考えてはいたが、飯代が高かったから、 学生らしくお貧乏さん公園幕営で。ちなみにいいテンバだった。 | ||
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3月10日 曇り 高山 = 浜松/静岡 寝坊したので遅い電車になった。高山は喫茶店が多いくせに朝食をやっているお店が少ない。 帰りで名古屋で味噌カツを食べた。 | ||
総話 今回、横尾尾根の下降予定だったが、結局新穂高温泉に降りた。燃料が危うそうで、 天気がまた悪くなるとのことがあったので、仕方なかったと思う。 今回のポイントは東鎌尾根だった。99年チームをちょっと悩ませた赤岩岳の通過 はそれほどの問題はなかった。どちらかというと大天井のトラバースの方が悪かったかもしれない。 冬山はやはりすべて雪・氷の着き方と天気次第だ。 今回のような中途半端でやわらかい雪の付き方だと、ビレーもできないところが多いし、 丸の初心者をつれて行くルートではない。ある程度アイゼンワークに慣れていない、 体力がないと危険だ。 凍傷したといっても、快適な雪壁・雪稜・岩のナイフエッジクライミング、雪洞泊まり、 すばらしい景色、ポジティブなところの方が多かった。 ルートのレベルも自分たちのパーティーにちょうどあっていたので、達成感があった。 山に対して、ちょっと強くなった気分になった。 |